藍沢:もともとはるか昔から、日本アニメのレベルは、物語も、映像表現も音響も、世界最高峰ではあったのですが、コロナ禍を経て、ようやく世界中の方々にその良さが伝わるようになりました。その結果、制作リソースの需要も急速に高まっています。 作品の本数も10数年前と比べると2倍以上になっていると思いますが、だからといって優秀なクリエイターが2倍にはなっていなくて…。 その結果、スタジオさんによっては、3年、5年先まで埋まってしまっているところも多いですよね。
INTERVIEW
経営層が語る、 次世代アニメーションスタジオ“Aurora Animation”とは。
経営層が語る、 次世代アニメーションスタジオ “Aurora Animation”とは。
今回は、3社が歩みを共にするに至った背景、Aurora Animationが挑む業界課題、そして今後の事業展望を、経営の視点からご紹介します。
お話をするのは、それぞれ自身の会社の代表を務めるAurora Animation取締役のふたり。スターリーキューブ代表の藍沢とAndraft代表の中山です。
Aurora Animation設立の背景
アニメ制作業界・市場の現状について
なぜAurora Animationを立ち上げたのか
藍沢:プロデューサーとしては、少しでも誰かの心を震わせられるような作品を生み出して、世の中にお届けしたいと思っていますが、ここ数年で「作りたい時に、作りたいものを、作りたいクリエイターと、作りたいクオリティで作る」ことの難易度がぐーんと上がったように思います。
それを実現するためには、信頼できるパートナーとともに新しいスタジオを立ち上げて、クリエイターを育てながら、持続可能な制作環境を整えていく必要があると、強く思うようになりました。
その過程で、スターリーキューブ代表の藍沢がAndraft代表の中山と別作品を共に制作したことをきっかけに、新たな制作体制の必要性について議論が始まりました。スターリーキューブは代々木アニメーション学院と声優領域を中心に長くお仕事をご一緒してきた実績があり、この協議に加わって頂きました。
中山:3社それぞれが抱えていたニーズや思いも、結果的にぴったり重なっていたんです。代々木アニメーション学院はより優れた教材の開発や産学連携に対して従来から強い関心があり、Andraftは制作リソースの安定的な確保、スターリーキューブは企画プロデュース会社として良質な制作ラインを求めていました
そうした課題感や目指す方向が同じだった3社が出会い、思いが重なったことで生まれたのがAurora Animationというスタジオです。
Aurora Animationの目指す姿
優秀なクリエイターを育て、持続可能な組織へ
中山:Aurora Animationでは、優秀なクリエイターに集まってもらい、若手を育成し、効率的な制作を行うこと、そして人材を育成できる仕組みを構築することを何よりも重視しています。
制作の方法として多数のクリエイターと共に1つの作品を作り上げる道もありますが、Aurora Animationが目指すのは少数精鋭による効率的な制作です。関わる人数に比例してコミュニケーションが困難になり、結果として修正の工数が増える傾向にあります。この修正を減らせるだけでも十分効率化につながると考えています。
そのためには当然優秀な人材が必須。しかし、優秀なクリエイターをすぐに採用・育成することは現実的ではありません。だからこそ継続的に人を育てる仕組みを構築し、その環境でクリエイターを育成し続けたいと考えています。
また、育成には当然、投資が必要になりますが、この点でも3社のメリットが活かせます。Aurora Animationを立ち上げた3社はそれぞれに本業の収益基盤があるので、Aurora Animationは利益の最大化だけ目的としていません。このため、収益を人材に対して投資しやすい環境なんです。
藍沢:優秀なクリエイターでも、納期などの条件が厳しすぎる案件ばかりを受け続ける環境では疲弊してしまい、持続的な活躍が困難です。実際に体調を崩してしまったり、心を病んだりしてしまう方も少なからずいらっしゃいます。
そこで、私が代表を務めるアニメの企画プロデュース会社・スターリーキューブとのシナジー効果を発揮できないかと考えています。
スターリーキューブは、イズムとして「クリエイターと同じ目線」を大切にしていまして、本読み(脚本会議のこと)やアフレコ、V編に加えて、ビジネスプロデューサーがあまり立ち会うことのない、マーキング・カッティング・ダビングというものづくりの大切なプロセスにもできるだけ立ち会うようにしています。その中で、クリエイターの気持ちをしっかり汲み取って、やりがいのある企画、無理のないスケジュールなどを含め、良質な案件をAurora Animationで立ち上げたいと思っています。
それによって、クリエイターが、生命のカケラでもある時間を作品制作に費やして良かった!と感じて幸せになれるような環境を作っていきたいですし、それが長期的な人材育成の土台にもなると思います。
3社に共通する“クリエイターを大切にする姿勢”
藍沢:代々木アニメーション学院は教育機関として、学生に真摯に向き合う姿勢と人を大切にする価値観を持っていて、Andraftとスターリーキューブも同様に「クリエイターを使い捨てにしない」という価値観を共有しています。
経営層全員が、クリエイターが伸び伸びと成長できる環境をつくることを真剣に考えている。その共通のマインドこそが、これからのAurora Animationの大きな原動力になっています。
中山:Aurora Animation は、新しい会社であるからこそ、しがらみのないフラットな環境を大切にしていきます。
良い作品を作るために様々な意見が交わされることは重要ですので、風通しが良く、誰もが意見を発信できる風土をつくっていきたいです。
代々木アニメーション学院・スターリーキューブ・Andraftの3社共にチャレンジを推奨する社風ですので、制作と製作の間にある見えない壁も取り除き、全てのクリエイターが作品を受け取る側のファンを意識したものづくりができる関係性を構築したいです。
今後の展望
中山: Andraftはこれから劇場作品に取り組んでいきますが、Aurora AnimationはTVシリーズを中心に制作していく計画です。劇場アニメとテレビアニメの制作で異なる部分はあるものの、それぞれのノウハウを互いに活かしあうことも十分できます。それぞれで培われる知見や経験を共有できることは、会社を長期的に強くしていくことにつながっていきます。
藍沢:できるだけ早く制作体制を整えて、TVアニメのグロス話数の受託からスタートしますが、近い将来には人気原作のアニメ化を元請けとして担当し、「Aurora作品なら観てみたい!」と安心してもらえるクオリティで世の中にお届けしたいですね。もちろん、オリジナル作品にも挑戦していく予定です!
中山:また、経営母体の3社ともお互いに技術・ノウハウの交流を行いたいですね。このような「一つの組織だけでは実現できない柔軟性と相互支援の体制」こそが、3社が共に取り組む最大の価値だと考えています。
藍沢・中山:TVアニメ制作のノウハウを蓄積し、継続的に作品を世の中へ出し続けることで、Aurora Animationの存在感を高め、3社の全体の事業価値にも還元していくつもりです。クレジットに名を残し続けることは、将来の受注を支える信頼にもつながると捉えています。
3社それぞれの強みが役割として結集している点が、Aurora Animationにとって大きな推進力です。代々木アニメーション学院は会社運営全般と人材育成、Andraftは採用とクオリティ基準、そしてスターリーキューブは持続可能なビジネス設計と企画を担います。
入口から出口まで多様なノウハウを統合できるからこそ、Aurora Animationは事業展開を確かな実現性をもって前へ進められる。そう確信しています。